脳動脈奇形とは何か
脳動静脈奇形は、‘奇形’と名のつくとおり生まれつき、脳内に存在する血管の先天性異常で、動脈、毛細血管、静脈等の分化がはじまる胎生3週頃発生するといわれています。序論のところでのべた動脈から毛細血管、静脈へと流れる正常の脳循環が脳動静脈奇形では欠損しており、動脈から流入した血液は毛細管を介することなく、直接静脈へ流入します。正常の脳循環で、静脈には、血液が動脈の十分の一程度の圧で流れていますが、脳動静脈奇形では、動脈圧のまま血液が静脈へ流入します。このため、静脈に過大な負荷がかかり、静脈は徐々に拡張したり、蛇行したりして、増大・拡張することがあります。また、これらの拡張した静脈が、その圧に耐え切れなくなって、血管壁が破綻したり、動脈と静脈の結合部にある‘ナイダス’といわれる脆弱な部分の血管が破れ、脳内出血を来すことがあります。

脳動静脈奇形による脳内出血の特徴

脳動静脈奇形による脳内出血は、高血圧性脳内出血やアミロイド性脳血管炎による脳内出血に比べると、比較的若年者に多く、主に20歳台から30歳台に発症することが多いです。突然の激しい頭痛、嘔気・嘔吐に始まり、麻痺や失語など、出血によって損傷された部位の症状を呈します。重症例では、意識障害を呈する場合もあり、患者の10%は初回出血により命を落とすと言われています。くも膜下出血を起こすことも少なくありません。出血以外の症状としては、しばしば、けいれん発作で発症する事もあり、片頭痛様の頭痛を呈することもあります。

脳動静脈奇形による出血の特徴としては、一旦、出血が起こった後でも、再出血の可能性が比較的少ないところにあります。通常、出血していない段階で脳動静脈奇形が診断された場合、年間出血率は2%〜3%といわれています。つまり、脳動静脈奇形を持っている人が100人いれば、その内、1年間以内に脳動静脈奇形が出血する人数は2人〜3人で、残りの97人〜98人は何ともないということです。出血を起こした場合でも初回出血後、1年以内に再度出血にみまわれる可能性は6%前後で、経過観察中に繰り返し出血を起こすような例は稀です。したがって、出血を起こした場合でも、血腫が大きく、脳を圧迫するため緊急に血腫除去を必要とする場合や、生死に関わるような場合でなければ、通常、保存的に経過観察を行い、詳しく検査した後に神経症状の回復を待ってから治療を行うことが多いです。

このように脳動静脈奇形では、再出血の可能性が低い場合が多いのですが、20歳台や30歳台の若年者で発見された場合には、余命が40年以上期待され、その間に出血する可能性は70%程度あると言えます。したがって、症状の軽い早期に診断を行い、発見された場合には、安全な治療が可能であればできるだけすみやかに治療を受けることが大切です。


 
Dクリニックのホームページへ